コスプレ用 天鎖斬月 模造刀改造版 作成レポート

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 1.前置き 2008年8月10日
 
 
 まずは、メールで問い合わせいただきました。  天鎖斬月。
   「ガイドライン」には書置きましたが、「ver2.X」の受注製作はしてません。でも廉価版の「ver3.0」思案中です。 としたところ、
   コスプレ目的ではない観賞用目的(ちょっと困惑)とのこと。 対話が続きます。
 ちと珍しいパターンだよね。 外観はともかく材質とかからは、観賞用って発想は無かった。
 んで、他にも「なんとか作ってくれませんか?」的なメールは、それまで十数件、
   「ガイドライン」設置してからも6件ほどいただいてたんですが、
   「今は受注してません」とか「作成期間に1ヶ月くらいもらいますよ」とか「価格10K〜12K円になりますけど」とか、返信してたら
   ほとんどの場合、そこでやり取りは停止してたんですよ。
   やっぱ長すぎる期間と小道具に10K円は払えないというのが主理由かと。
 そりゃそうだ。
 それでも対話が続いた人で、「外観据え置きで、強度無くても良いので安価にできませんか?」という人が2名ほど。
   さすがに即答できる話では無かったんで断りましたが、「くすぐられるもの」が有った訳ですよ。
 あ、悪い癖が出た。
 
 そんな時にこの「観賞用」の問い合わせ。 対話の方向から「見せる」のではなく「浸る」方向だったので、
   模造刀の拵え改造で良いんじゃね? ということに。 価格的なものも認めてくれる人だったんで。
 ふーむ。 それは「良い」のか?
 まぁ、需要のほどはわからないけどやってみる価値は有るかと。
   と、言う訳で 「模造刀改造版」と「廉価版」=「ver3.0」 という流れになりました。
 あー 本当は「廉価版」=「ver3.0」の方が早かった訳だ。
 良いの。 顧客が居る方を早く進めるべき。= レポートが先に仕上がる。 だから。
 
 まぁ・・・「ver3.0」ができあがれば「ver2.X」は放置になるんだが・・・(ボソ)
 
 
 
 
 2.見積り〜受注 2008年8月18日
 
 
 対話が進みまして、見積書発行です。 運搬用のバックも一緒にということだったんですが、価格等折り合わなかったので
   今回は無しです。
    以前2007年6月ごろでしたが、同じ苗字の方とやり取りして、その時も模造刀の改造の話になり、
   話の流れが、「刀としての使用」を目的としたもの(振ったり鞘に収めたり)になっていったので、
   同様の改造をお断りしたことがあったので、もしかして同じ人? とかと思ったりしましたが、
   今回のように、「鞘は要らない」「観賞&なりきり目的」「模造刀承知」などの条件なら、別に同一人物でも良いや ってなことで
   作成依頼を お引き受けすることにしました。
 良いの?
 良いの。 法的には問題ないし、天鎖斬月でもっとも手間がかかるのは、刀身の成形だから
   「拵え」の変更のみで、どのくらいの手間がかかるか試してみるのも良いかと。
   「観賞&なりきり目的」も広義ではコスプレだし、亜鉛合金なんで踏み込んで素振りしたら曲がるし(昔やってみたら曲がった)。
   そこは自己責任だし。 興味が出てホントにコスプレしてみるのも良いし(笑) ちなみに見積書はこんな感じ   見積書
 モノクロにデータ落としてるね。 まぁ良いけど。
 
 んで、早速作成依頼もらいましたよ。 @からCまでフル受注っすよ。
   さて、これから模造刀発注しても良いけど、手元にある資料用の私物で、計画を前倒ししても良いな・・ ふむ。
 手間も価格も変わんないしね。 納期短くなるか。
 
 
 
 
 3.仕様検討 2008年8月21日
 
鍔まわり分解  
 ゼロから全部作るのと違って、原型があるので
   「原型」部分と「作成」部分のすり合わせはしないと。
    目釘は移動できないのがわかっているので
   全ての基点は目釘にする。
 「作成」部分の鍔に合わせると、新しく目釘穴を
   あけることになるし、そうなると茎(ナカゴ)にも新しい貫通穴が
   欲しくなるから、やめた方が無難か。
 んで、鍔周りを分解してみた。
 
 刀身とハバキはそのまま使うとして、ハバキと柄の間は
   6mmしか無い。  天鎖斬月の鍔部分は、3mm板使っても
   ハバキの土台みたいなのに5mm使うから計8mm。
   うぬー。
 
柄巻き  
 柄巻きの平紐は、丁寧に解けば再利用できるかなぁー
   と、思ってたら接着してありやがんの(当然か)
   隙間に爪が入らん。
 この柄巻きには紐の裏表両方が表面に出るから
   新しい紐の巻き直しだねぇ。
 
 んでもって、通販業者からのお知らせでは
   模造刀到着は来週になる模様。
   現物とのすり合わせが必要な所以外を進めよう。
 
 
 
 
 4.鍔成形 2008年9月1日
 
買い物  
 21日出張 22日23日風邪で寝込む 24日大会
   25日出張 26日平常 27日28日出張 29休日出勤と、
   なにこの作業できないコンボ。
    でも、28日に模造刀、29日に平紐が届いて
   やっと材料がほとんど揃った感じです。
   模造刀は店が違っていてもやっぱり同じ仕様ですね。
   持っているものより 目釘周りが若干きれいな感じ。
 この価格帯だと違う所では作ってないでしょ。
 
卍鍔  
 パーツの擦り合わせがあるので、工程としては
   鍔作成→柄・刀身と合わせ→鍔塗装
   柄巻きと柄頭外し→柄成形・塗装→再柄巻き
   柄頭成形→鎖加工→柄頭塗装
   刀身塗装
   こんなもんか。 順番も刀身の塗装が最後ね。
 
 んで、鍔作成中。
   今回も3mm板+1mmモールド×2ね。
   ここから模造刀に合わせて穴あけ等していきます。
 
柄解体  
 予想通りと言うか予想以上と言うか
   接着剤べったりですな。
   瞬間接着剤系のカッチリしたものなら、
   ほぐせば取れると思ったら、Gボンド系のゴムっぽいもの。
 接着力と柔軟性を考えるなら当然でしょ。
 オマケに目貫(柄に付いてる装飾部材)まで裏表とも
   べったり接着してある。 どうしたもんだか。
    柄頭を樹脂粘土で作って取り付けるためには
   こちらの形状も成形せねば。
   柄巻きを接着するなら結び目は考えなくて良いかも。
 
 
 
 
 5.続・柄の分解 2008年9月4日
 
剥がしてみた  
 2日、3日と連続出張。相変わらず進まない。
   丁寧に接着剤を剥がせば、なんとかなるんじゃネ?
   と思って目貫を剥がしてみた。
    ・・・・接着剤の溶剤で柄下地のモールド溶けちゃってる。
   仕方が無いので目貫はそのまま利用の方向で。
 やっぱり、なんとかして柄下地用のテクスチャー
   転写方法考えなきゃダネ。
 
 
 
 
 6.摺り合わせ 2008年9月7日
 
合わせ作業  
 うおっ、そうこうしている内に納期が迫ってきた。
   一番時間がかかる塗装の乾燥時間を考えると、
   そろそろやばい。
   やっぱ材料揃えるのに1週間使って、出張立て込んだのが
   かなりひびく。
   ちょっとずつでも進めるべきだった。
   
    それはさて置き、鍔の接着までやったので本体との
   摺り合わせ。
   組んでは削り、また組んでは削る地道な作業。
   今回は目釘位置が基準なので、鍔の厚さに合わせて
   柄も削ってます。2mmほど。 硬てーのなんの。
 
調整終了  
 組みあがった感じはこんなトコ。
   金属色とプラの白がミスマッチですな。
 
拭き拭き  摺り合わせが終わったので、
   ・柄→塗装→柄巻き
   ・刀身→塗装
   ・鍔→研磨→塗装
   と、個別作業に移ります。
 まずは、刀身の拭上げ。
   皮脂、油脂、金属粉、ゴミ等を除去します。
   結構付いてますよ。
    ちなみに乾拭きじゃなく溶剤拭き。
   使ってるのは消毒用じゃないアルコールね。
 何のアルコール?
 ヒミツ。 メタノールやエタノールだと
   皮脂が取り難いし、アセトンだとメッキへの影響がねぇ・・
    だから、ちょっと変なアルコール使用。 皮脂も防錆油も
    研磨材も良く落ちるんよ。
 
 
 
 7.つーかーまきまき 2008年9月10日
 
柄の塗装  
 柄の塗装終了。
   今回は珍しくプライマー(下地剤)使ってます。
   んでもって目貫と柄紐を接着するところにはマスキングして
   塗装が乗らないようにしています。
 なんで?
 んーとね、ラッカー系使ってないから
   塗装の上に強い接着剤乗せると、剥離する恐れが出るの。
   たぶん・・・だけどね。  保険だよ保険。
 
接着準備  
 元はGボンド系の接着剤を使ってただろうけど
   あっしは柄紐の固定に両面テープ使う派なんで
   こんな感じです。
 
柄巻き  一旦完成。
   目貫がそのままなので、元の平紐再利用です。
   絹も良いけど、ポリエステルの艶も良いよね。
   
 柄留めの位置、逆っぽくね?
 しょうがないの。
   柄自体、若干短くなってるし、巻き位置もずれて
   一段分短くなってるんだから。
   
   画像右が柄頭になるけど、ちょっと仕事してあります。
   予算的にはプライマーで+、平紐再利用で−、
   トータル若干オーバー・・・
 
 
 
 8.一気に完成?まで 2008年9月16日
 
柄頭成形  
 12日「から」出張が入ってたんで突貫作業ですよ。
   とりあえず天気は良かったんで刀身塗装作業と平行して
   柄頭の成形です。 なかなか慣れない。
 樹脂粘土はちょっとね。
 今回は多少の無駄は覚悟して
   柄頭にボテ盛り → 熱硬化 → カッター荒成形
   と、ヤスリだけでなく大まかな成形をカッターでやって
   やりすぎたところを修正って感じで。
   仕上げは紙やすりね。
 
パーツ揃い  
 んで、塗装もだいたい済んだので全体を組んでみます。
   ちなみに刀身は金属(メッキ品)ということで、この段階で
   プライマー×2+グロスブラック×4の6度塗装!
   時間かかってますよー。  特にプライマー。
   刀身の鍔元にプアライマーが乗らないところが有って
   乾燥したときに焦った焦った。
   途中で全面剥がすわけにもいかなくて
   段差削って続行するしかなかったもん。
   いやー、仕事柄「メッキ面」に「はじく」部分が
   出来るのは経験してるけど、こんなところにも似た現象が
   有るとは思わなかった。
刀身に皺がっ  うー、撮影場所(自宅外)に運ぶために
   梱包テストも兼ねてラップ巻きにしたら
   刀身に跡がついちまった。
   
 乾いてない?
 と言うか、短時間に6回も塗装してるから
   表面しか硬化してない感じ。手には付かないし。
   仕上げにもう一回上吹きして放置乾燥だねぇ。
   
一旦完成  ま、とにかく組立完成図。
   フォルムは模造刀のままだね。
   
ななめから  斜めからみると、なかなか良い格好。
   こういうのはベストな角度が有るよね。
鍔アップ  鍔周り。
    その他の画像はあとでアーカイブに入れておこう。
   
   
 まぁ色々不手際あったけど、なんとかここまできたね。
 実は、山場がまだ残ってるんだけどね。
   塗装硬化後の引渡しでOKもらいましたので、
   刀身バラして仕上げ塗装して1週間くらい乾かします。
   ま、出張から帰ってからなんだけど。
 
 
 
 9.発送と決算 2008年9月23日
 
荷造り  よーやく発送です。
   最後の山場としては、模造刀とは言えむき身・・もとい
   抜き身のまま発送するので、下手すると飛び出しかねない
   切っ先の処理をどうしたものかと。 結局、
   外/ダンボール/硬質ウレタン/タオル積層/緩衝材/刀身
   の順に切っ先が刺さっても止まるようにしてみました。
 過剰・・・って言うか切っ先の方が大丈夫か?
 んー、安全策優先で、
   塗装が擦れて剥れたらごめんなさいということで。
   応力集中はハンパじゃないはずだし、
   緩衝材は当てにならない。
   そうなると布:塗装+金属だと 塗装が一番弱い。
   それよりも、柄頭が破損しないかが心配だけどね。
 
 
 んで、到着と検品結果待ちということで、恒例の決算。
 
 左は原材料(原単価)。 右は今回使用分価格。 切断等使用は1円端数切り上げ。
 
   模造刀(通販料込み)                5150円         本体
   フォーレックス 450×300×3mm(1100円)    110円(1/10枚)     鍔
   フォーレックス 450×300×1mm(430円)      50円(1/10枚)     鍔
   樹脂粘土「プレモ」ブラック(400円)         400円(1個)      柄頭
   プラチェーン黒6号(450円/m)            150円(1/3m)      鎖
   スプレー塗料 ディープレッド小(450円)      230円(1/2本)
   スプレー塗料 ブラック大(700円)         1050円(1+1/2本)
   メタルプライマー (900円)              180円(1/5本)
   プラスチックプライマー (900円)           180円(1/5本)
 
 計上外
 
   接着剤 2種
   両面テープ
 
     合計  (5150円+5330円)           7500円
 
  部品の新規購入だけ見れば割りに合いませんが、小分けした部品価格だけ見れば・・・・やっぱ割に合わないか。
 作る楽しみはあったので、足してOKということで。
 
  反省点は、やはり加工速度と塗装の仕様。  初めてのところもあったので一概には言えないけど
 納期的には、模造刀の入荷時点から完成までを半分の日数でできるのではないかと思う。(次回が有ったら)
 加えて塗装。 厚塗りしすぎ。 プライマー1回+ブラック2回 くらいでやれば、刃紋は出るけど「見られるようにはなった」かな?
 
  到着後、検品結果が良ければ終了ということで。
 
 
 
 
 
 10.到着 2008年9月26日
 
  到着の連絡いただきました。
 刀身とかも飛び出さず、なんとか届いたようです。
  
  鍔の強度は全体的に弱めでしたが、形状とその外観からの雰囲気は気に入っていただけたようで、良かったです。
 納められるような鞘も加工できれば良かったんですが、内側にフェルトかなんかの「仕込み」が必要になるので今回は見送りです。
 塗装強度は今後の課題。
  それでも今回は良い仕事をさせていただきました。 感謝感謝。
 
 
 




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